2020年から女流棋士界にとって、大きな棋戦が始まりました。
それが「ヒューリック杯白玲戦・女流順位戦」です。(以下、白玲戦)
白玲戦の詳しい情報はこちらからご覧ください。
各グループの1位通過者8名による、決勝トーナメントが6月14日より始まりました。
尚、決勝戦は7番勝負(先に4勝で勝ち)となっております。
それでは、決勝トーナメント1回戦の結果と今後の予想も踏まえて、語っていきたいと思います。
今年度以降、女流棋士界は確実に盛り上がってきますので、今のうちにチェックしておくことをお勧めします。
決勝トーナメント1回戦
6月14日ついに決勝トーナメント1回戦が行われました。
各リーグ1位通過者同士のぶつかり合いのため、激戦必須です。
まずはトーナメント表を見てみましょう。

重鎮から現役最強女流、若手のホープまで凄いメンツが名を連ねました。
伊藤沙恵 女流三段 vs 加藤圭 女流二段
先手:加藤圭
後手:伊藤沙恵
共に居飛車、振り飛車どちらも指しこなすオールラウンダー対決になりましたが、
戦型はまさかの相振り飛車となりました。

後手の伊藤さんから、仕掛けていきました。
伊藤さんが32手目の2五桂としたところに、加藤さんが4五桂と跳ね違いをみせたのが面白い一着でした。
そこからは加藤さんがペースを掴みました。
薄い相手玉へ一気に猛攻し、69手目には5四飛車切りとして、大駒を捨てて優勢を確実なものとしていきました。
そして終盤の77手目の5三歩が、とても綺麗なとどめの一手となりました。
(図の局面)
※左記は、重要部分のみ反映しております。
先日、タイトル挑戦をした伊藤さん相手に、加藤さんが快勝となりました。
おそらく前評判的には、伊藤さん有利でしたが予想をひっくり返しました。
加藤桃子 女流三段 vs 西山朋佳 女流三冠
先手:加藤桃子
後手:西山朋佳
現在、女流界最強の一人として三冠を所持する西山 女流三冠。
その王者に挑むのは、タイトル8期を獲得している加藤桃子 女流三段。
ここ数年でタイトル戦も含め、何度も戦っている二人ですが、今回もお互いの得意戦法となり対抗形になりました。(居飛車vs振り飛車)

中盤までは一進一退の攻防が続きました。
加藤さんは端攻めを繰り出し、西山さんは飛車先突破を計ります。
互いの主張がぶつかり合った局面で、加藤さんに悪手が出てしまいました。
(99手目)
しかし、そこからも加藤さんは端攻めを絡めた猛攻で、西山さんを攻め立てます。
防戦一方だった西山さんですが、素晴らしい切り返しの手を指しました。
それが114手目の2九飛車切りでした。
馬のラインをずらす素晴らしい一手でした。(図の局面)
※左記は、重要部分のみ反映しております。
この手が決め手となり
西山さんが見事勝利し、女流三冠の維持を見せました。
渡部愛 女流三段 vs 石本さくら 女流二段
先手:渡部愛
後手:石本さくら
正統派将棋でタイトル獲得経験もある強豪渡部さんへ、22歳若手のポープ石本さんが挑むという構図になりました。
石本さんは最近プロで多く指されている、三間飛車を採用しました。

角交換からペースを掴んだのは渡部さん。
駒得しながらゆっくりと攻めみます。
対して石本さんもダイヤモンド美濃囲いに組み、チャンスをうかがいます。
しかし、着実に寄せてくる渡部さんの攻めをなかなか受けきれず、79手目6四歩が急所に刺さり、そのまま渡部さんが押し切りました。(図の局面)
※左記は、重要部分のみ反映しております。
渡部さんの快勝と言ってよい内容でした。
里見香奈 女流四冠 vs 中井広恵 女流六段
先手:中井広恵
後手:里見香奈
個人的には、今大会一番の注目カードとなった二人の対局。
現役最強の女流棋士の一人であり、女流棋士歴代最多タイトル獲得数44期を達成した里見 女流四冠。
相対するは、羽生世代の女流棋士として、1990年代にタイトルを獲りまくったベテラン女流棋士 中井 女流六段。
こちらも互いの得意戦法となり戦型は対抗形となりました。(居飛車vs振り飛車)

中飛車対策の定番でもある「超速二枚銀戦法」で、中井さん有利に進みました。
しかし、里見さんが黙ってやられる訳がありません。
自陣に持ち駒の桂馬を打つなど、相手の攻めをはじき返していきます。
激しく駒がぶつかり合う中、ついに中井さんに疑問手が出てしまいました。(7三角切り)
その後、中井さんの攻めを、冷静に対応していく里見さん。
飛車取りを見せた手を放置し、一気に攻めに転じました。
そして相手の固い守りの中へ、7八歩という絶妙手が出ました。(図の局面)
※左記は、重要部分のみ反映しております。
この歩を起点に、見事に寄せ切って里見さんが逆転勝ちを収めました。
準決勝の対戦表

ということで、勝ち残ったのはこの4名です。
- 加藤圭 女流二段
- 西山朋佳 女流三冠
- 渡部愛 女流三段
- 里見香奈 女流四冠
そしてトーナメント表はこのようになります。

展開予想
それでは、準決勝の予想をしていきたいと思います。
皆さんもどんな戦いになるか?どちらが勝つのかなど、考えてみてください。
直近の加藤さんの勢いは凄まじいものがあります。
渡部さん、加藤桃子さんなども次々と倒しており、絶好調です。
西山さん相手にも番狂わせを十分に起こせると思います。
戦型は、西山さんはほぼ振り飛車確実なので、問題は加藤さんです。
1回戦の伊藤さんとの戦いを見ると、力戦になりやすい「相振り飛車」を選ぶと予想しておきます。
もし、序盤で加藤さんがリードを奪う展開なれば、相当激戦になると思います。
最多タイトル保持者である里見さんに誰が勝てるのか?が、今とても注目されています。
直近10局でも女流棋士にはまだ負けていません。
今年度初の黒星を、渡部さんが付けるのか!?見ものです。
戦型は、ほぼ確実に対抗形になると思います。
里見さんは中飛車が多いので、おそらく中飛車で来ると思います。
それに対し、渡部さんがどんな作戦を用意してくるのかが楽しみです。
中井さん同様「超速二枚銀」が有力かと思っています。
【速報】7月9日決勝トーナメント準決勝
まとめ
ヒューリック杯白玲戦・女流順位戦
【決勝トーナメント一回戦】
×伊藤沙恵 女流三段 vs 加藤圭 女流二段〇
×加藤桃子 女流三段 vs 西山朋佳 女流三冠〇
〇渡部愛 女流三段 vs 石本さくら 女流二段×
〇里見香奈 女流四冠 vs 中井広恵 女流六段×
【準決勝 対戦カード】
加藤圭 女流二段 vs 西山朋佳 女流三冠
→ 予想戦型は「相振り飛車」
渡部愛 女流三段 vs 里見香奈 女流四冠
→ 予想戦型は「対抗形(中飛車vs超速二枚銀)」
以上となります。
これからますます面白くなっていく女流棋士業界。
男性棋士の羽生九段、藤井二冠が注目されたように、女流棋士が一世風靡する日も近いかもしれませんね。
是非、この機会に将棋を見てみたり、ルールを覚えて指してみたりしてください。
楽しさが倍増しますよ!
今後のヒューリック杯白玲戦・女流順位戦も引き続き楽しみにしていてください。
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